」 って ずーっと前から約束してたMJファンに、ぶじ贈呈。
初日に撮影所に着いたのは朝５時だったけど、マイケルはすでに衣装とメイクを整えてスタンバってたのよ。
おどろいたわ。
少し中性的でなんとなく異質で、美しかった。
いいえ、彼のことは新聞やTVで知るだけだったの。
だけど実際に会うと違ってた。
要するに、プラスの方へとひっくり返されたのよ。
マイケルの仕事への取り組み方，プロ意識，あらゆる歌や振り付けを咀嚼して吸収する完全主義っぷりは、称賛に価するわ。
もちろん！
マイケルの巨大なトレーラーがどーんとあったし、弁護士・マネージャー・ボディガードがゾロゾロ付いてたしね。 族長みたいな専用シェフもいたわ。
彼のもとには連日スターが訪れてたわよ。 初日にはソフィア・ローレンが，そしてエリザベス・テイラーや歴代の大スター達がね。
ええ。彼はとてもスイートでシャイね。
トレーラーでのランチに招待してくれた時、マイケルはTVアニメを観て笑ってたわ。
こどものまま体だけ大きくなったピーターパンな面もあれば、内向的だけどエキセントリックで人々に驚きを与え、観衆の前では信じられないほどリラックスしているんだもの、彼って。
マイケルの中には "怒り" という遺伝子がDNAに存在しないのではと思うほど、その感情を表すのが難しいと最初に判ったの。
その代わり、彼は "痛み" と "優しさ" を表すことが出来た。
私のシーンを撮る週を終え、彼のシーンを撮る朝のことを憶えてるわ。
私の撮影は予定に無かったのに、マイケルが私にフルメイクでキューを出すよう要求してきたもんで、ほとほと困っちゃった。
それでも、彼がプラットフォームに上って歌い踊り始めると、胸がドキドキして体が震えたわ。
魅了されたわ、自然界の成せるものに。
これまでに観たことのない、純粋な才能だけが成せるパフォーマンスにね。
キャプテンEOの後は、めったに会うことは無かったわ…
けど皮肉にも、ひと月前に偶然、私たちの主治医である皮膚科のクライン医師のオフィスでバッタリ会ってね。
私たちはハグして、部屋にこもって２時間おしゃべりしたわ。
性的虐待疑惑訴訟やマイケルが長年暮らしたネバーランドを失った悲しみについて語り合ったの。
私が憶えているのは…
「彼らは、ぼくの夢を滅ぼしたんだ。
たぶん子供っぽくて取るに足らないぼくの夢、自分に全くなかった無邪気な子供時代というものを讃えて作った場所を、彼らはぼくから取り上げた。
ぼくは子供たちを愛している。絶対に彼らに危害など与えられやしない。
愛する彼らのためにより善いことをしようと、全人生を傾けてきた。
子供を傷つけたという名誉棄損には心を打ち砕かれた。耐えられない痛みだよ。あれらの告発は不当でひどい‥‥」
そう言ってマイケルは泣き始めたの。
私はマイケルを腕の中に抱きしめたわ。彼はとても痩せっぽちで、か弱かった。
ロンドンのコンサートを準備していると話してたわ。
私は彼に言ったの。
「その唯一のショーをどうか中止しないようにね。 じゃなかったら彼らから殺されちゃうわよ！」
マイケルはこう答えたわ。
「わかってるよ。そんな事になろうものなら二度と振り向いてもらえなくなるからね、より良くすべく自己調整中だよ。」
そう語るマイケルは痩せていて顔色が悪いようだったけど、皮膚科なのにフルメイクだったので見定めるのは難しかったかも。
１つ言えるのは、過去の事と将来に対する数々の不安と不確実性に抱くマイケル自身の痛みを感じることが出来た、という事ね。
マイケルには失意があったわ。そのためよ。
もちろん検死で見つかった物質的なものはあるけど、本当は彼らがマイケルの心を打ち砕いたのよ。
マイケルは、世界を変えたわ。
アフリカ系アメリカ人の人生すべてを変え、白人と黒人の間に障壁がないということを証明した。
彼は本当に白でも黒でもあったのよ。
エルビスのような人はいても、マイケルのような人は決していないわ。
マイケルの持つ特異性は、これまでもこれからも、決して誰も持ち得ないものなのよ。
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